ReviewsGems & Gemology, Winter 2016, Vol. 52, No. 4

書籍:Cartier Dazzling: High Jewelry and Precious Objects(輝かしいカルティエ:ハイジュエリーと貴重なオブジェクト)

Jo Ellen Cole

Cartier Dazzling(輝かしいカルティエ)の表紙
François Chaille著、ハードカバー、272頁、出版: Flammarion(フラマリオン)、パリ、2016年、$125.00

ほとんど毎年のように出版され、美しいハードカバーで装丁されるこのシリーズの最新作、Cartier Dazzling: High Jewelry and Precious Objects(輝かしいカルティエ:ハイジュエリーと貴重なオブジェクト)は、カルティエの全作品の新しいコレクションを紹介し、有名なジュエリーのアトリエや贅沢なクライアントも紹介しています。 カルティエは有名なジュエリーを数多く生み出しており、世界的に有名な宝石を多くの作品に取り入れています。 ブルーのHope(ホープ)、 Star of South Africa(スター・オブ・サウスアフリカ)、Pasha(パシャ)、Star of the East(スター・オブ・ザ・イースト)および様々なデビアスのダイヤモンドは、すべてカルティエのマスタージュエラーの手によって素敵な作品となり、カルティエの豊かな歴史を飾っています。

カルティエは、1899年にパリのブルバード デ イタリアンからラペ通りへ移転しました。これは当時新しかったこの宝石店にとって戦略的な動きとなりました。 この高級ショッピング地域には、Mellerio(メレリオ)やAucoc(オーコック)のようにすでに定評のある宝石店があり、近郊にあるヴァンドーム広場ではWorth(ワース)やPaquin(パキン)のオートクチュール、Guerlain(ゲラン)の香水、Viault-Esteの靴、Charvet(シャルヴェ)シャツなどの高級店が立ち並んでいました。 これらの高級店は、Hotel Bristol(ホテルブリストル:別名「王のホテル 」)、Ritz(リッツ)、Hotel des Iles Britanniques、Westminster(ウェストミンスター)など、パリで有名なホテルが数多く近くにある場所に位置していたため、裕福な旅行者がショッピングをするのには非常に便利でした。 これらの高級店に近いため、ショッピングをする重要なクライアントを共有することで、Louis CartierとJean-Philippe Worthは、カルティエがラペ通りへ移転する前に知り合いとなり、後に親友となりました。  そして、世紀の変わり目にJean-Philippeの娘、Andrée-CarolineがLouisと結婚し、2人の絆はさらに深まりました。 1910年、Louisの妹のSuzanneは、偉大なるWorth家の一員、Jacques Worthと結婚しました。

カルティエは、あまり使用されていなかった金属、プラチナを19世紀の終わりにジュエリーに取り入れて作品を作り始めました。 プラチナには軽くて優美な雰囲気があったため、Worthがデザインしたドレスを一層引き立てました。 ガーランド スタイルとして知られているジュエリーのこの新しいスタイルは、ジュエリーデザインのベル・エポックの時代を象徴しました。

1911年にカプールタラのマハラジャを導入したことにより、Louis Cartierの弟であるJacquesがインドの上流社会の人々と交流するのが可能となりました。 インドの王子達は、カルティエに自分たちの宝石を披露し、プラチナを使ってモダンなデザインの作品に作り直すよう要請しました。 その結果、裕福であることを好む有名なインドの風潮は、20世紀初めの3分の1の間で、彫刻が施されたルビー、サファイア、エメラルドがあしらわれた、カルティエを象徴する作品「Tutti Frutti(トゥッティフルッティ)」(または「フルーツサラダ」)というジュエリーに反映されました。

カルティエのジュエリーは、ヴェネツィアで1951年9月3日に開催された「Ball of the Century(世紀の舞踏会)」で数多くの人々が着用していました。 1500人もの参加者やカフェ・ソサエティのメンバーである上流社会の人々の多くが、カルティエの作品をこよなく愛しており、その中にはミシン製造会社Singer(シンガー)の相続人かつ社交界の著名人、Daisy Fellowesもいました。 彼女は、ファセットカットされて彫刻が施されたサファイア、ルビー、エメラルドを複雑に飾り立てた、カルティエの有名な1936年製の作品「Hindu(ヒンドゥー)」を身に着けてこの舞踏会に出席しました。 最終的に、この象徴的なネックレスは、1860年から現在までのジュエリーのうち非常に素晴らしい1,500品を収集する、カルティエコレクションの一部となりました。このコレクションの中には、Woolworth(ウールワース)の相続人Barbara Huttonがかつて所有しており、バゲットダイヤモンドと較正されたルビーの留め金が付いた、見事な品質とサイズの27個のジェダイトのビーズがつながっているネックレスもあります。

2015年の終わりに披露されたÉtourdissantコレクションは、彫刻を施したモルガナイト、カルセドニー、ジャスパーを使用して、花やヒョウを作り上げ、形や色を定義したり強調しています。 彫金浮き彫りや打ち出し細工に関する議論では、ツバメをテーマにしたダイヤモンドのペンダントネックレスを完成させるのにどれだけの技量と見事に技術的なスキルが必要とされたかが説明されています。 また、様々なデザインで使用できるように、おそらくプラチナであると思われる頑丈なワイヤに掘削されたダイヤモンドのブリオレットがつながっている、ダイヤモンドの「糸つなぎ」もコレクションでご覧いただけます。 数多くの素晴らしい宝石がこのコレクションを飾り立てており、Bleu Azur diamond(ブルーアズールダイヤモンド)、ピンクのAube diamond(オーブダイヤモンド)、ビルマ産のAndaman sapphire(アンダマンサファイア)、コロンビア産のAmazonie emerald(アマゾニアエメラルド)が含まれています。 しかし、今年のコレクションで最も貴重な作品は、スリランカ産であり重量197.80カラットを誇る、Romanov sapphire(ロマノフのサファイア)でしょう。

カルティエは、ロシアが新たに築き上げた共産政府がロシア帝国の宝石を販売した1925年と1928年の間に初めてロマノフサファイアを購入しました。 ロシアの王室が廃位されたときにこの帝国の宝石は押収されました。 このサファイアがロシア帝国の所有物であった事実は、極めて稀少な作品の目録、『Les Joyaux du Tresor de Russie (Russia’s Treasure of Diamonds and Precious Stones)(ダイヤモンドと貴石、ロシアの財宝)』のフランス語版でイラストプレートと石の記述によって確認されました。 石の写真はフランス語版では掲載されていますが、元の販売で宝石を伴っていた英語版からは省略されました。 このサファイアがカルティエへ2014年に再び販売される間にこの目録は参考書として再度利用され、この宝石はMaria Feodorovna(ロシアの最後のロマノフ皇帝ニコライ2世の母)の所有物であったことが確認されました。 彼女の人生に関する説明は短かいけれども完全であったので、聴衆はこの石の歴史について啓発されました。 1920年代にカルティエがこの石を購入した後、ポーランドのオペラ歌手Ganna Walskaがこの石を購入しました。彼女は、このサファイアをいくつもの異なる方法でネックレスにセッティングしました。 最終的に、このサファイアは、カリフォルニア州モンテシトにある彼女の邸宅の庭園を改善するために、1970年に彼女の数多くある宝石コレクションのほとんどの作品とともに競売にかけられました。 2014年にロマノフサファイアを再び取得したカルティエは、これをブレスレットにセットして、ダイヤモンドで飾り立てました。

カルティエは1920年代でのみミステリークロックを作ったという印象をお持ちの読者は、Étourdissantコレクションでは2つのミステリークロック、つまりファロス・ミステリークロックとターゲット・ミステリークロックがあり、その他には画期的な磁石によって作動する「セリアン」磁気クロックがあることがお分かりになり喜んでいただけることでしょう。 また、ピンクトルマリン、ダイヤモンド、ピンクゴールドの非常に微細なヒンジ式バングルウォッチブレスレットもご覧いただけます。

カルティエのÉtourdissantコレクションで見られる宝石では、形が重視され、色が巧みに使われています。ルビーで見られる炎のような強い赤色やエメラルドの緑色の渦が、真っ白のダイヤモンドやブラックのオニキスの中性色を見事に引き立てています。 現在のコレクションは、初めて1920年代に作成されて現在モダンに変更されたカルティエの素敵な好評の作品「Tutti Frutti(トゥッティフルッティ)」の新たに取り入れられたデザインを特集しています。 おそらく、このコレクションの最も美しい宝石は、野生動物を描いたものであり、特にカルティエパンサーが最も見事なものでしょう。 早くも1914年にカルティエの象徴として登場したこのヒョウは、現在、興味を掻き立てる動物として作品に取り込まれています。  

Cartier Dazzling(輝かしいカルティエ)は、ジュエリーの歴史家、デザイナー、そして象徴的なブランドおよび偉大な創意工夫を表現する見事な技量を愛するカルティエの愛好家にとって役に立つ書籍となるでしょう。

Jo Ellen Coleは、30年以上に渡り、宝石業界に従事しています。 2002年以来、Cole Appraisal Services(コール・アプライサル・サービス)にて査定、鑑別、および博物館の展示相談サービスを提供しています。

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